地球上の各地に分布する植物の種類を比べ、その植物相(フロラ)の特徴に基づいて幾つかの地域に分けた区域のことを植物区といいます。大きく6つに分けられる世界の植物区の1つが南アフリカのケープ植物区です。植物相が極めて特異で、最も小さな植物区でありながら6200もの固有種が確認されています。ゼラニウムやガザニア、極楽鳥花やプロテアなど、世界中で栽培されている華やかな園芸植物の故郷でもあるため、見慣れた花と見たことも無い花とが共に咲き乱れる世界屈指の花の王国です。
2025年8月下旬、冬の雨のあと一斉に花が開くという早春の花園を訪ねました。ケープタウンから北上し、ナミビア国境に近いスプリングボックまでを往復する6日間、ナミブ砂漠に向かって北へ行くほど、乾燥した砂漠に近い気候の平原が広がります。スプリングボック近郊の「ナマクワランド国立公園」は地平線まで続くオレンジ色のナマクワランドデイジーの景観が有名なところです。
小学生のときディズニーの記録映画「砂漠は生きている」を見て、砂漠が雨の後に一斉にお花畑になるシーンを何十年も忘れられずにいました。映画はアメリカの砂漠でしたが、ナマクワランドでそれに近い光景が見られると聞いたのが今回の旅のきっかけでした。
写真上段 左:ナマクワランド国立公園 右:ナマクワランドデージー(キク科)





写真下段 左からビートルデイジー(キク科)、マツバギクのなかま(ハマミズナ科)、ペラルゴニウム(フウロソウ科)
今回訪れた地域ではケープタウンの一部以外森林はほとんど無く、背の低い灌木が点々と生える景色がどこまでも続いています。初めて見る不思議な景色です。この灌木をフィンボスと呼び、フィンボスの生える植生もフィンボスといいます。フィンボスの意味は葉の細い灌木のこと。乾燥に強い植物たちで、種類はとても多く場所によっても違います。ケープタウンに近いテーブルマウンテンではプロテアやエリカのなかまが目立ちましたが、スプリングボック周辺ではマメ科やキク科、トウダイグサ科などがまばらに生えていて、その間の砂地をこの季節は花が埋めていきます。特産のルイボス茶のルイボスもマメ科のフィンボスです。
写真上段
左から 車窓から見たフィンボス 平原から山の斜面まで続く、フィンボスの種類は色々だが葉が細く小さい、
アロエ ディコトマ(ツルボラン科)背が高い植物はこれくらい







写真下段
左から フーハップ自然保護区のフィンボスとガザニアやマツバギクのなかま、ワーレンベルギア(キキョウ科)コドン(ムラサキ科)
地中海性気候で、夏は乾燥し冬に雨が降るため、砂地に埋まっている大量の種子や球根が春に芽生え一斉に花を咲かせます。海岸から山あいまでさまざまな場所が花に埋まる季節はわずか3週間ほどで、夏にはすっかり砂地に戻ってしまうそうです。
写真上段 左:ヘリオフィラ(アブラナ科) 右:ウルシネラ(キク科)のお花畑
写真中段 左から へスペランサ(アヤメ科)、ロムレア(アヤメ科)、ラペイロージア(アヤメ科)、ラケナリア(キジカクシ科)








写真下段 左:西海岸のカタバミのお花畑 右:真っ赤なガザニア(キク科)と黄色のブルビネラ(ツルボラン科)
ケープタウンの周辺には、テーブルマウンテンやカーステンボッシュ植物園、ケープペンギンの生息地ボルダーズビーチ、喜望峰など多くの観光地があります。ケープ岬のプロテアの多いフィンボスでは2年前の山火事で焼けたところが黒く広がっていました。乾燥地では山火事も自然のサイクルのひとつのようですが、ここでも温暖化の影響や外来種の侵入などが問題となり、絶滅の危機にある動植物も多いようです。 (文、写真 坂本玲子)
写真左上段:テーブルマウンテンからの眺望 写真左下段:山頂のフィンボス
写真右:絶滅危惧種 ケープペンギン







左から、エリカのなかま(ツツジ科)2枚、プロテアのなかま(ヤマモガシ科)、キングプロテア(ヤマモガシ科)南アフリカの国花