~古の色を求めて~ 草木染ことはじめ Ⅵ-1
「藍染めの話」


2023年7月

藍草と藍染めの技術は、五世紀ごろに中国から朝鮮半島を経て、渡来人によって伝えられたと考えられています。                                 阿波(現在の徳島)で藍草の栽培が行われる様になったのは、平安時代からとされ、蒅の製法も室町時代には始まったと言われています。

藍の文化が大きく花開いたのは、江戸時代です。幕府の奢侈禁止令により絹や派手な色が制限される中、木綿の普及とともに、丈夫で汚れも目立ちにくい藍染は、仕事着や普段着、暖簾など幅広く使われるようになります。阿波の蒅も藍玉として全国へ運搬されていきました。

明治時代、日本を訪れた外国人の目には、町中至る所にある藍色がとりわけ強く印象に残り、やがてその色は「ジャパン・ブルー」と呼ばれ、日本を象徴する色のひとつとして知られるようになりました。

江戸を彩った藍という色

藍以外に大量に青く染められる染料はほとんどありません。染め方によって淡い色から濃い色まで様々な色を得ることが出来、その色名は薄い色から順に、瓶覗、水浅葱、浅浅葱、花色、千草色、縹、深縹、紺、褐色などと呼ばれ、その全てが美しく心を和ませます。他の染料と重ね染めをして、緑や紫、黒などの色合いを出す事も出来ます。

江戸の町には多くの紺屋があり、染め上げた藍の布が干される風景や、商家の紺暖簾、人々が身につける藍染の衣服など、藍色は日常を彩る色となっていきます。

こうした藍染めの広がりは、筒染め、絞り、絣、筒書きといった技法の発達をもたらし、なかでも江戸では、細かな文様を染める江戸小紋や、浴衣などに用いられた長板中形といった高度な型染めの技術も磨かれていきました。

江戸後期になり、経済的に自立した町人達は、支配階級の武士に対しての対抗意識から、茶、鼠、藍、黒などの地味な色をすっきりとした「いき」な色として愛でてました。特に藍色のバリエーションは四十八茶百鼠と言われ、ことのほか愛されました。

紺暖簾を掲げた木綿問屋が軒を連ねる、江戸・大伝馬町。歌川広重《東都大伝馬街繁栄之図》天保~弘化頃 国立国会図書館蔵 画像出典:国立国会図書館デジタルコレクション(3枚続画像:Wikimedia Commons)
歌川広重(初代)/画「名所江戸百景 神田紺屋町」(江戸東京博物館)出典: Tokyo Museum Collection (https://museumcollection.tokyo/works/6235004/)

世界の藍染め

藍染めの文化は古代から世界各地に息づいています。日本ではタデアイが主ですが、沖縄ではリュウキュウアイ、インドではインドアイ、ヨーロッパではウォード(タイセイ)が使用されています。

蓼藍(タデ科)インドシナ半島原産と言われ、中国東部、朝鮮半島、日本で使われている。
印度藍(マメ科)インド原産東南アジア一帯で使われている、古代よりindigo と言われている。
琉球藍(キツネノマゴ科)インドのアッサム地方、タイ~ミャンマー原産と言われ、沖縄で使われている。
タイセイ(ウォード)(アブラナ科)ヨーロッパ原産。ヨーロッパから北アジアで使われていたが、印度藍の輸入により利用が減少

藍の染料を運ぶには、保存出来る状態にする必要があります。乾燥させて発酵させる蒅(日本のタデアイ、ヨーロッパのウォード)泥状にする方法(沖縄の泥藍)乾燥させてブロック状にする(インドアイ)などの地域によって様々な方法がとられました。

タデアイを利用した藍染めの技法

藍は染めの応用範囲が広い植物です。方法は大きく分けて、生の葉を直接利用する「生葉染め」と、藍草を染料(蒅、泥藍、インド藍など)にしたものを発酵させる「藍建て」の2種類があります。「生葉染め」は生葉さえあれば簡単に染まりますが、鮮度の良い葉が必要で時期も限られます。絹やウールは染まりやすいですが、木綿はあまり染まりません。一方、「藍建て」は絹も木綿も良く染まります。染料(蒅、インド藍など)は市販されていて時期は問いませんが、自分で発酵させて染料液を作る必要があります。沈殿藍は顔料(絵具)としても使う事が出来ます。

 藍の生葉染めのしくみ

タデアイの葉そのものには青の色素(インディゴ)は含まれておらず、インジカンという無色の物質が含まれています。生葉を水につけたり揉んだりすると、酵素の働きで糖がはずれ、インドキシルという物質に変ります。液に布などを入れると繊維にそのインドキシルが染みこみ、とり出して空気中の酸素にふれると、インドキシル同士が結びつきインディゴ(青色)へと変化します。

生葉染め(ウール)

藍の発酵建てのしくみ

蒅や、泥藍、インド藍などは、すでにインディゴが生成された状態になっています。インディゴは水に溶けないのでこのままでは染まりません。そこで、微生物などの力を使って、水に溶けるロイコインディゴという別の姿に変化させます。繊維の中に入り込んだロイコインディゴは、液から取り出し空気にさらすと、酸化されて再び水い溶けにくい青いインディゴに戻ります。浸す→空気にさらすと繰り返すことでインディゴが少しずつ重なり深い藍色になります。

藍の発酵建て

(木綿糸)

生葉染めと藍建ての違いをまとめると・・・

以上を踏まえて、木綿を染めた場合で比べてみました。

生葉染めでは絹や羊毛は比較的良く染まりますが、木綿は染まりにくい特性があります。ただし、全く染まらないわけではなく、繰り返すことで少しずつ色を重ねることが出来ます。

(次回 タデアイの生葉を使った染め)

参考文献:「日本の色のルーツを探して」城一夫、「藍染の絵本」山崎和樹、「天然染料の化学」青木正明、「染太郎の口伝帳」北澤勇二、「新版草木染 四季の自然を染める」山崎和樹、「染司よしおかに学ぶ はじめての直物染め」吉岡更紗、「Maito Design Worksのおうちで楽しむ草木染め」小室真以人 文、写真、作品 永井智津子(作成協力 AI) 


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