海岸を彩る海浜植物を見にいきませんか


海辺を歩くと、海風が心地よく感じる時もあれば、吹きすさぶ強風で立って いられない時もあります。内陸と比べると、塩分を含んだ風が強い、土壌(砂)が移動する、日差しが強く乾燥するなど、海辺はとても厳しい環境です。このような環境に生育する海浜植物はどのようなものが見られるのでしょうか。
海辺を訪れた時にはぜひ、足元に広がる海浜植物に目を向けてみてください。

ここでは、最初に「海岸型」と呼ばれる植物を紹介します。「海岸型」とは、内陸で見られる植物が、海辺の環境に適応した形質となって見られるものです。厳しい環境に適応するため、内陸のものに比べ茎が太くて背が低い、葉が厚い(多肉),毛が密生するなどの特徴があります。例えば、猫じゃらしで知られるエノコログサですが、海辺ではエノコログサにかわりハマエノコロがよく見られます。

波が寄せたり引いたりする波打ち際では、海藻、流木、貝殻や漂流物など様々なものを見ることができます。
しかし、ここに植物は見られるでしょうか。あまりにも不安定な環境のため、少しだけ内陸側にいかなければ植物を見ることはできません。大波がきた時、たまに波をかぶる程度の場所であれば、植物はしっかりと根をはり波に流されることなく生育できます。
波打ち際から少し内陸にいくと砂浜に現れる植物を紹介します。ここで見られるのは草本だけで樹木はまだ見られません。

上記の植物が見られるところからさらに内陸にいくと、多少波しぶきや潮風の影響が少なくなってきます。
この辺りになるとようやく背の低い樹木が出現します。

背の低い樹木(灌木、低木)の後背には、亜高木、高木と、だんだんと背の高い樹木を見ることができるようになります。ここで見られる樹木は、常緑照葉樹が ほとんどです。また、崖地などでは海から吹きつける季節風の影響が大きい斜面において、樹高が低く、林の上面が刈りそろえられたようになめらかな形に見える風衝低木林が成立しています。崖地に張りつくように生育している草本も多く見られます。

海岸で見られる植物は、厳しい環境に適応するため、内陸で見られる植物とは少し違う特徴を獲得しました。それは、厳しい環境の中でもひとときだけ可憐な花を咲かせる高山植物のおかれている環境ととてもよく似ています。高山植物はそれなりに保護されていますが、対して海浜植物はどうでしょうか。埋め立て、車の乗り入れ、漂着ごみの問題など、海浜植物の生育環境は少しずつせばめられています。

季節が来れば、いっせいに色とりどりの花をつける海浜植物。海岸を訪れたときはぜひ、可憐な姿を見つつその生育環境に思いを馳せてみてください。(イラスト・文 斎藤美穂子)

*上記の記事は2022年1月に発行された森に親しむ野外講座のニュースレター「森のかぜ No.1」を転載しております。


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