森で見られる哺乳類の痕跡


 

日本には、外来種を含め陸生の哺乳類が約130種ほど生息しています。
日本列島は南北約3,000kmにおよび亜熱帯から亜寒帯までの気候帯を含み、また低地から高山までと標高も多岐にわたり,多様な森林環境に恵まれていることから、ほかの国と比較して単位面積あたりに生息する動物種が豊富なところといえます。

千葉県の陸生の哺乳類は、外来種を含め34種です。日本全国で確認されている哺乳類の約25%が千葉県に生息していることになります。

外来種は、アカゲザル、マスクラット、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ、アナウサギ、ノイヌ、アライグマ、ノネコ、ハクビシン、キョン、イノシシの12種で県内に生息する哺乳類の35.3%に当たり全国の割合(約18%)と比べても外来種の多い県といえます。

ほかの県の森林ではお馴染みのモモンガ、ムササビ、ヤマネ、カモシカ、ツキノワグマは、千葉県では現在生息していません。

哺乳類は、森のなかでなかなか見ることのできない動物です。たとえ目撃できたとしてもあっという間に逃げ去って,よく観察できなかった、ということがよくあります。
哺乳類の活動時間がおもに明け方や夕暮れから日没後のことが多いので、どうしても森を散策するときの遭遇率が低くなります。ただ、哺乳動物が残していった痕跡(フィールドサイン)を見つけることで,彼らの存在を感じ取ることができるでしょう。

いくつか紹介します。

1.フ ン

フンは最も見つけやすいフィールドサインのひとつといえます。
代表的なのはイタチやテンのサインポストといわれるフンの排泄の仕方で、切り株の上や登山道のど真ん中の石の上といった目立つ場所に見られます。自分の存在を同種のほかの個体に知らせるサインで、フンがコミュニケーションの役割をしているようです。
フンを小枝などで砕いてみると、植物の種子や昆虫の羽や季節によってもいろいろ違ったものが見つかり,動物たちの食生活を想像できます。

2.食 痕(食べあと)

食痕の例として見つけやすいのはリスがマツボックリやクルミを食べた跡。
マツボックリの食痕がエビフライのようになるのは有名な話です。エビフライはクマネズミなども作るようです。リスはクルミの合わせ目を前歯でかじって真っ二つに割って食べますが、ネズミ類は端から穴を開けるようにかじって食べます。

リスがマツボックリを食べたあとの
通称エビフライ
クルミの食痕 左はネズミ、右はリス

3.角研ぎ跡

千葉県ではニホンジカに遭遇する機会が多いと思いますので、フィールドサインとして角研ぎの跡を紹介します。

シカはオスだけが角を持ちます。春先から皮膚に覆われた袋角という状態で枝分かれしながら角は大きくなりますが、8〜9月頃皮膚が裂けて骨のような硬い角になります。このときオスジカは自分でも木などにこすりつけて皮膚を除こうとするので木の幹に跡が残ります。皮膚をはがした硬い角は秋の繁殖期にオス同士がメスを巡って闘う武器なので先端を木にこすりつけてとがらせたりするためその跡も残ります。
身体が大きい個体の立派な角は、メスを惹きつけるための強さのシンボルとしても大切な道具です。
この大事な角も翌年の春先には根元からポロリと落ちてまた一から作り直しです。

シカが角研ぎをしたと思われる樹皮が傷ついた木

4.ぬた場

イノシシやシカの仲間は、水場に近い湿った泥のところで転げ回って身体の寄生虫を落とす習性があります。こうした場所では毛が残っていたり、獣臭がしたり、周りに足跡が残っていることもあるのでよい観察場所です。
(FIC会員 萩埜 恵子)


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