全国のおすすめ探鳥地


千葉県のおすすめ探鳥地


ご紹介する探鳥地リスト

①伊豆沼・蕪栗沼のガン・ヒシクイ

宮城県北部の伊豆沼と蕪栗沼は日本最大のガン類の越冬地です。各々に10万羽以上、合計では恐らく20万羽以上が10月下旬から2月頃までこの周辺に集まります。日本で越冬するマガンの8割以上と言われています。このあたりは仙台平野の広大な水田地帯が広がり、稲の2番穂などガンのエサが潤沢に有ります。周辺農家の協力で「ふゆみずたんぼ」も多く存在し、水を張ったたんぼはキツネなどが寄り付かずガン類が安心してエサを取れ、一方水鳥の糞は天然の肥料になり、生物多様性にも寄与しています。ふゆみずたんぼで作られた米は付加価値が高く、自然と共生した環境配慮型の農法が営まれています。

この地域を訪れると、日本の原風景の中にいる、という懐かしい感覚に浸れます。広々と広がる田園地帯には林が散在し、所々ヨシ原なども広がります。昼間のゆったりと流れる時間帯には、ハクチョウやガンの家族が「かぎになり竿になり」三々五々飛び交っています。時には間近でその羽音を聴くときも有ります。

圧巻は、朝の飛び立ちと夕方のねぐら入りです。ガン類は夜は安全な湖沼で過ごすので、朝は夜明けとともに数万羽のガンが一斉に飛び立ち空を埋め尽くします。雪を被った栗駒山を背景に無数のガンが飛び交う様は素晴らしいものです。日暮れ前のねぐら入りも見事です。遠くの山の端から湧き出る様に次々と群れが現れ、夕焼け空を背景に無数のシルエットが浮かび上がります。蕪栗沼の上まで来ると多くのガンが渦を巻くように飛び交い、最後は落雁(急に失速しハラハラと水面近くまで落ちて行く様)で着水します。
毎年訪れたい場所です。

ヒシクイ
マガン

②出水平野のツル

鹿児島県出水市は1万数千羽のツルの越冬地です。越冬期間中の給餌とふゆみずたんぼでツルのねぐらを整備しています。ねぐらの過密化による感染症発生時の懸念が有るため他地域への分散化計画も進められています。

「出水市ツル観察センター」の周辺で、朝の飛び立ちと夕方のねぐら入りをじっくりと見ることが出来ます。伊豆沼・蕪栗沼と並ぶ西の横綱です。

「ツル」は野鳥の中でも特に優美さと気品を感じさせてくれます。北海道の原野に佇むタンチョウは1羽でも絵になります。出水市で見られるのはナベヅルルとマナヅルです。鳴き交わしながら首を伸ばして向き合い家族の絆を確かめ合っている姿や親子で一心に採餌する姿には心が和みます。

稀にカナダヅルやアネハヅルも混じります。モンゴルで子育てしヒマラヤを超えてインドで越冬するというアネハツルがここで見られた時の嬉しさは忘れられません。

朝の旅立ち

給餌風景
ねぐら入り
ナベヅル

マナヅル
アネハヅル

③知床流氷船からのオジロワシ・オオワシ

バードウオッチングの醍醐味は猛禽に有り、野生の強さ、精悍さ、弱肉強食の厳しさを強く感じさせます。その中でも、イヌワシ、クマタカ、オジロワシ、オオワシの大型猛禽には特に憧れます。空の王者、森の王者、海の王者です。滅多に見られないこれらの鳥ですが、知床羅臼港から出る流氷バードウオッチングの船に乗ると驚くほど多くのオジロワシとオオワシが見られます。流氷に乗ってカムチャッカ方面からやって来るのです。

オジロワシは以前は知床半島のみで繁殖していましたが、今では道東・道北の各地で繁殖し、夏でもそこそこ見られます。ただ冬に渡ってくる方が数は圧倒的に多いのです。一方オオワシはオホーツク海沿岸・カムチャッカ半島で繁殖し、一部が冬の北海道で越冬(稀に本州にも来ます)します。その為、実際に姿が見られるのは事実上、冬の北海道だけになります。そのオオワシがオジロワシと共に数百、いや千は優に超える、というほどの数で流氷上に群れ、また雪を被った羅臼岳や国後島を背景に青空を飛び交うのですから、これほどの醍醐味は有りません。

2月に流氷が知床半島を回って羅臼にも着岸する頃から見られます。冬の北海道の強風や悪天候と風任せで動く流氷に出会うという条件をクリアして見るのは旅行者にとっては中々大変ですが、それでも見たくなる絶景です。

オオワシ
オオワシ②

オジロワシ
オジロワシ②

①奥日光

奥日光はわずか12Km四方、ここに山、川、森、湖、湿原、草原、滝がぎっしり詰まっています。奥日光形成の主役は男体山と三岳と湯川。男体山と三岳の噴火が湯川をせき止め、湖と湿原を作り、滝をかけました。湯川は湯ノ湖、湯滝、戦場ヶ原、竜頭の滝、中禅寺湖、と日光の名所を貫く清流で、中禅寺湖からは華厳の滝を経て大谷川へ注ぎます。奥入瀬を彷彿とさせる清流です。

こうした多彩な環境は多くの種類の鳥たちに棲息環境を提供します。戦場ヶ原には草原性のノビタキ、ホオアカ、オオジシギ、草原に進出しつつあるズミや、ハンノキの林ではキビタキ、アオジ、カッコウ、ツツドリなどが鳴きます。湯川にはカワガラスが飛び、日本で夏を越すマガモ、オシドリも見られます。少し奥まで足を延ばして切込・刈込湖まで行けば、亜高山性の鳥であるエゾムシクイ、メボソムシクイ、コマドリ、ルリビタキの合唱を楽しめます。運が良ければ上空を飛ぶクマタカにも出会えます。

戦場ヶ原
戦場ヶ原②
湯川
ノビタキ

ホオアカ
カワガラス

②戸隠森林植物園

戸隠森林植物園は落葉広葉樹の明るい森です。

林床にはミズバショウ、ミツガシワ、ギョウジャニンニク、ズダヤクシュ、ヤマシャクヤク、ニリンソウ、ラショウモンカズラ、ルイヨウボタン、クリンソウなどの多くの草本類が綺麗な花を咲かせます。オシダをはじめとしたシダ類も多く見られます。低層木はオオカメノキ、マユミ、ニシキギ、ガマズミ、タニウツギなど。中層木はウリハダカエデ、ハウチワカエデなどのカエデ類、ズミなど。高木はシナノキ、ヤチダモ、ハルニレ、カツラ、イタヤカエデ、ブナ、トチノキなど。やや小高い所にはモミ、ウラジロモミ、カラマツ、イチイの針葉樹の森もあり、奥社へ続く参道は日光にも比肩するほどの見事な杉並木です。また若木から老木、朽ちかけた倒木なども有り、林床から樹冠まで実に多くの植物がきめ細かく住み分けています。

野鳥は種類ごとにエサ、営巣場所、隠れる場所などが異なるため、戸隠の多様な環境が多くの種類の野鳥の棲息を可能にしています。また森全体としては茂りすぎずに明るく見通しも効きますので、野鳥を見つけやすい所です。
大きめの都市公園並みの広さなのですが、これだけの良い条件が揃っている為、整備された木道を歩きながら実に多くの野鳥に出会えます。

初夏には、アカハラ、クロツグミ、キビタキ、コルリ、ノジコ、コサメビタキ、キバシリ、アオジ、クロジ、ニュウナイスズメ、アカゲラ、アオゲラ、オオアカゲラ、カッコウ、ツツドリ、ホトトギスなど、カルガモやカイツブリの親子連れ、マガモ、オシドリなどのカモ類にも出会えます。

鏡 池

ヤマシャクヤク
ラショウモンカズラ
コルリ

アカゲラ
キビタキ
アオジ

①オホーツク海沿岸の原生花園

日本最北の地稚内の少し南側に広がるサロベツ原野から時計回りにオホーツク海沿いを行くと、根室半島の先端の納沙布岬に至るまで、多くの原生花園が連続しています。

主なものだけでもサロベツ原生花園、メグマ沼原生花園、ベニヤ原生花園、オムサロ原生花園、コムケ原生花園、ワッカ原生花園、小清水原生花園、野付半島、春国岱、北方原生花園と続きます。

6月にこの地域を訪れると花と野鳥の両方楽しめます。花にとまって囀る小鳥たちは絶好の被写体です。セリ科の大きな白い花にはコバエなどが群がり、それを狙って多くの野鳥が集まります。本州では見られない花や野鳥が多いことも魅力です。

花では、ハマナス、エゾスカシユリ、エゾカンゾウ、クロユリ、ヒオウギアヤメ、エゾニュウ、などなど。

野鳥では、本州では高原でしか見られないホオアカ、ノビタキ、コヨシキリ、オオジシギ、アマツバメなどが原生花園では普通に見られます。本州では見られないエゾセンニュウ、マキノセンニュウ、シマセンニュウはそれぞれ特徴のある声で囀り、特にエゾセンニュウは大声を張り上げてホトトギスの様にトッピンカケタカと鳴きます。ノゴマ、ツメナガセキレイ、夏羽のオオジュリンなども魅力です。

以前は知床半島だけで繁殖していたオジロワシは生息域が広がり、オホーツク海沿岸でかなりの頻度で現れ、飛翔する姿は大迫力です。タンチョウも釧路湿原だけでなく道内各地で見られるようになりました。湖にたたずむタンチョウは気品と優美さに溢れ、崇高な気持ちにさせてくれます。

原生花園

エゾスカシユリ
ノゴマ

ツメナガセキレイ
マキノセンニュウ

オオジュリン

②釧路~根室

釧路から根室に至る太平洋沿岸を走る道路(道道142号、123号)沿いは、いち押しのシーニック道路です。道端にはキタキツネが頻繁に現れ、空にはオジロワシが飛び、湿原ではタンチョウ親子がエサを取っています。あやめケ原原生花園、霧多布、落石岬など木道が整備されたスポットも有り、ノゴマ、ベニマシコ、オオジュリン、オオジシギ、などの鳥が見られます。

落石漁港からユルリ島・モユルリ島を巡るクルーズ漁船に乗ると、エトピリカ、ウミスズメ、チシマウガラスなどの希少な海鳥や子育てをしているラッコやアザラシを見ることが出来ます。

タンチョウ
タンチョウ親子

オオジシギ
エトピリカ

③天売島

天売島は周囲12Kmの小さな島ですが、8種、100万羽もの海鳥が島の西側の断崖で巣を作り繁殖しています。ウトウ、ケイマフリ、ウミスズメ、ウミガラス、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種です。

ウトウは2011年の調査では40万ペア、80万羽もおり、天売島が世界最大の繁殖地です。断崖の上に1m以上の深さの穴を掘って巣を作ります。赤岩展望台付近では巣穴が異様なほど無数に広がっている景色に驚かされます。夕方かなり暗くなるころ、親鳥がキビナゴなどのエサを口いっぱいにくわえて巣に戻ってきます。次から次へと押し寄せてくる姿が夕闇にシルエットとなって浮かぶさまは壮観です。

ケイマフリは繁殖地がオホーツク海沿岸から北海道・青森県に限られた希少種で、外国人に人気の鳥です。普段は海上で過ごすので、繁殖のため陸地に来る天売島が絶好の観察地になっています。

ウミガラスは「オロロローン」という鳴き声からオロロン鳥とも呼ばれるペンギンに似た姿の鳥です。かつては天売島に数千羽が居ましたが激減し、数つがいが繁殖するだけになりました。その為環境省が巣を誘致するために断崖の上にデコイと鳴き声を流す音声装置を設置して保護増殖事業を行っています。

小型のクルーズ船に乗って崖下にいくと、海に潜ってエサを取るウトウや赤い脚で海面を走って飛び立つケイマフリ、崖の棚にデコイと一緒にいるウミガラスやヒメウの巣などが間近に見られます。

天売島は春・秋の渡りの時期には日本海に浮かぶ中継地として多くの種類の鳥が羽根を休め、また島の林や草原には、ノゴマ、シマセンニュウ、エゾセンニュウ、コヨシキリなどの夏鳥が繁殖しており、小さな島に野鳥観察スポットがぎっしり詰まっています。

天売島の隣に位置する焼尻島は天然記念物に指定されているオンコ(イチイ)の森が広がっています。雪と強風のため高さはわずか1.5mほどで、その分、横に枝を伸ばし、直径は10mにもなります。森好きならば一度は訪れてみたい所です。

夏山で出会う鳥

夏山登山での一つの楽しみは、高山帯にすむ鳥たちとの出会いです。高山の鳥と言うと、ライチョウ、イワヒバリ、カヤクグリと少数ですが、夏は高山地帯にやって来る鳥を含めると、ウソ、メボソムシクイ、ルリビタキ、ビンズイ、ホシガラスなどがいます。またアマツバメやハリオアマツバメも高山を飛び回ります。ウグイスは海岸から高山のハイマツ帯にまで棲む環境適応力抜群の鳥です。エゾムシクイとコマドリは少し高度が下がって上高地や奥日光などでは1500メートル以上の所に良く現れます。北海道では低地でもコマドリが鳴きます。

これらの鳥は、中部山岳地帯の場合、1500mから2500mの高山帯を歩いていれば結構出現します。

1500m付近では、コマドリ、メボソムシクイ、ルリビタキが主役でウソ、ビンズイもいます。2000mを超えて森林限界に近づくと、イワヒバリやカヤクグリが現れます。

森林限界を超えてハイマツ帯になるとホシガラスが現れます。ハイマツとホシガラスは共生関係で、ホシガラスの主食はハイマツの種であり、一方ハイマツはホシガラスが貯食した種の食べ忘れによって分布域を広げています。ハイマツは厳しい高山の環境下で成長は極めてゆっくりで、10センチの太さになるのに100年かかると言われるほどです。

ライチョウの棲息地は南・北アルプスと上越の火打岳付近だけです。

南・北アルプスのハイマツ帯や高山植物のお花畑の中で見かけます。夏山登山最盛期の7~8月頃は、数羽の子供を連れた親子連れのことが多く、エサを取ったり砂浴びをしている姿などが見られます。ライチョウは日本では奥山の守り神として狩猟対象とされてこなかったことから人を恐れません。平気で登山道に出てきますし、登山者が脇を通ってもじっと身を伏せるだけで逃げ出さないことが多いので、写真も撮らせてもらえます。

イワヒバリ
ウソ
ルリビタキ
ホシガラス
ライチョウ
ライチョウのヒナ

離島

離島に出かけると本土(本州、北海道、四国、九州)では中々出会えない珍しい鳥に出会えます。

その理由はいくつか考えられます。まず第一に奄美大島や沖縄本島の様に大陸から離れて長い年月が経ち、その間に島独自の進化を遂げた種がいるケースです。奄美諸島ではルリカケス・アマミヤマシギ、沖縄本島ではヤンバルクイナ・ノグチゲラ、小笠原諸島のメグロなどです。

第二に渡りの経路に当たる島では、渡りの途中の鳥が中継地(休息場所)として数日間立ち寄るというケースです。元々数が少ないうえに普段は分散してしまって滅多に見られない珍鳥も、小さな離島では密度が高まるので見られることが多いのです。日本海に浮かぶ舳倉島、飛島、粟島などはこのケースで、春と秋の渡りの時期にいわゆる珍鳥を含む多くの種が見られます。網羅性が要求される野鳥図鑑では、離島で撮影した鳥が多く掲載されています。

第三には、分布域が一定の島嶼部に限られているケースで、三宅島を中心とした伊豆諸島のアカコッコ、種子島以南の島に住むアカヒゲ・ホントウアカヒゲなど、また理由は定かでは有りませんが、離島だけに棲息するカラスバトなどもいます。

珍鳥を見に離島に出かけるだけでなく、日本の自然環境の多様性やその形成過程なども合わせて捉えると、野鳥観察も一層楽しくなります。

(文・写真 安武 弘幸)

ルリカケス
ヤンバルクイナ
アカヒゲ
カラスバト

PAGE TOP