野鳥観察ヒント集


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あの鳥な~に?  … 見る・読む・わかる 野鳥観察入門 …

野鳥をじっくり眺めたことはありますか。
草花と違って近づけば逃げてしましますし、まして手に取ってみることは出来ません。カラスやスズメ、ウグイスの声は良く聞きますが、いざじっくりと観察しようと思っても見つけることすら大変です。知っている様で余り良く知らない、というのが野鳥です。
ここでは身近な野鳥の観察が楽しくなるポイントを初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
野鳥観察の楽しさを是非体験してみてください!

野鳥観察を始めようと思ったときに一番のおすすめは冬に多く見られるカモ類です。カモ類は小鳥よりずっと大きく、湖沼や河川で比較的容易に見つけられます。またじっとしていることも多いので、双眼鏡やスコープで確りと見ることが出来ます。
カモ類は10月頃から日本に渡ってきますが、年末頃までにオスは綺麗な繁殖羽になります。カラフルで鮮やかな色合いは感動的ですらあり、一旦見れば野鳥が好きになること請け合いです。オスはこの美しい姿でメスに求愛してカップルになり、春になると子育ての場所である北方へ渡っていきます。
代表的なカモ類を紹介しましょう。

①マガモ
オスの頭の色は、光の当たり方や見る角度によって、緑、紫、濃紺と色々変わりますこれは構造色と言って羽毛な繊細な作りが光を複雑に反射するために起こる現象です。コガモやハシビロガモも同様です。

マガモ①
マガモ②

②コガモ
一番小さいカモです。オスは体の後方の黄色い所(下尾筒)をメスに見せつけて求愛します。

コガモ

③ハシビロガモ
くちばし(ハシ)の幅が広いカモです。集団でグルグル回って水の渦を作り、湧き上がってくるプランクトンを幅の広い嘴で漉しとって食べます。

ハシビロガモ①
ハシビロガモ②

④ヒドリガモ
頭の中央に太いクリーム色の線が有るのでとても目立ちます。時々集団で陸に上がって草を食んでいます。

ヒドリガモ

⑤オシドリ
オスは実にカラフルで、一目でわかります。子育ては森の中の樹洞で行います。写真②はメスが木に登っている所です。

オシドリ オス
オシドリ メス

小さくて近づけば逃げてしまう野鳥を見るには、双眼鏡は必須の道具です。更にスコープ(望遠鏡)も有ると素晴らしい体験ができます。
私は双眼鏡とスコープでカモ類や初夏の高原の小鳥たちを見たのがきっかけで野鳥に魅了され、今では全国各地の野鳥を見に行ったり写真撮影を楽しんだりしています。

双眼鏡を選ぶとき倍率は8倍程度の物がお勧めです。倍率と言うのは例えば50メートル先にとまっている鳥を見る時、8倍の双眼鏡で見ると1/8の距離、つまり6.25メートルの所から肉眼で見ているのと同じ大きさに見えるという事です。その位近づければかなりはっきり見えますね。

更にスコープでは20倍~60倍くらいまで倍率を上げられますので、50メートル先の鳥を20倍なら2.5メートル、50倍なら1メートルの所から見ていることになります。これなら毛並みや表情など細かいところもくっきり見えます。野鳥の羽根の美しさにはきっと驚くことでしょう。

双眼鏡もスコープも使いこなすには少し慣れが必要です。野鳥はまず肉眼で捜します。野鳥らしい姿を見つけたら、そこを見つめたまま、顔と目を動かさず、首にかけた双眼鏡を眼に当てます。この時ピントが合っていないことが多いので、いきなりぼやけた像になり、つい顔や眼を動かしてしまいますが、そこは我慢してピント調整ダイヤルを左右に回してピントを合わせます。鳥が見つかるまでゆっくり上下左右を見たり、ピントダイヤルを少し回して前後をよく見たりして捜します。

スコープは大きく見える分、視界がかなり狭くなりますので、ピンポイントで覗くことが必要になります。双眼鏡で見た後、周囲の枝ぶりなどを覚えておいてゆっくりとそこを捜します。慣れてくれば素晴らしい道具ですので、根気よく何度も使ってみましょう。

スコープ

野鳥観察の大きな楽しみは、姿を見ることと並んで、その鳴き声を聴くことです。
初夏の高原の早朝、鳥たちは夜明け前30分くらいからさえずり始めます。数十数百の鳥たちの声がシャワーの様に降り注ぎ、瑞々しい若葉の中から小さな鳥たちの生命力が溢れ出て、生きている喜びを感じさせてくれます。

写真のウグイス、オオルリ、コマドリは「日本三大鳴鳥」とされています。
小鳥を捜すには、鳴き声が頼りです。良く鳴くのは4月~6月の繁殖の時期、オスが縄張りを確保し、メスに求愛する為にさえずります。大きな声で複雑なさえずりほどメスにモテることが多いため、性選択の結果として、オスのさえずりは大きく複雑になって来ました。

種毎に異なるさえずりが分かるようになると、野鳥観察の面白さが一段と増してきます。野鳥は種毎に棲息する場所・環境も異なりますので、声を聴いたら、木の梢か、中段か、地面付近か、茂みの中かなど居そうな場所を探すことで、姿も見つけやすくなります。

野鳥の声を覚えるにはCDなどを聞き込むことが有効です。ネット上にもバードリサーチなど声を聴けるサイトが多数ありますし、Youtubeでは画像と一緒に声が聞けます。また、鳴き声を人の言葉に例えた聞きなしを覚えることも有効です。ウグイスのホーホケキョ(法、法華経)はあまりにも有名ですが、センダイムシクイの「焼酎一杯グイー」、イカルの「お菊24」、メジロの「チルチルミチル」、ホトトギスの「特許許可局」、サシバの「キス・ミー」などユニークなものも多く、一度覚えてしまうと本当にそう聞こえてきますので不思議なものです。

繁殖が終わると野鳥の声は余り聴かれなくなりますが、地鳴きと総称される警戒の声や仲間同士の情報伝達などの声は聞こえます。夏以降はこのかすかな声を頼りに鳥を捜します。

①ウグイス
大きな声で、朝から晩まで、春から秋遅くまで鳴きます。生息地も海岸から亜高山迄と適応力が強い鳥です。
冬は公園で「ジャッ、ジャッ」と強い声の地鳴きです。ほとんど藪の中にいるので姿は滅多に見られません。

ウグイス

②オオルリ
樹の天辺でさえずるので、見つけやすい鳥です。頭から背中の濃いブルーと腹の白さのコントラストが美しい鳥です

オオルリ

③コマドリ
本州だと1500m位の亜高山帯を棲み家としており、薄暗い所に居るのでなかなか見られない鳥です。ただ、声は非常に大きく、登山をしていると
「ヒン、カラカラカラー」とコマドリの名前の由来である馬のいななきに似た声が良く聞こえます。

コマドリ

④アカハ
高原の早朝、朝一番にアカハラの「キョロンキョロン、ツィー」と繰り返し鳴く元気な声が樹の天辺から降ってきます。

アカハラ

⑤クロツグミ
森のフルート奏者と言われる伸びやかで良く通る声です。アカハラに似た声ですが色々な鳴き方をし
時に他の鳥の鳴きまねも交える愉快な鳥です。

クロツグミ

⑥キビタキ
クロツグミのフルートに対して、森のピッコロ奏者と言われる鳥です。鳴き方は実に多様で、なかなか覚えられません。
鳴き方よりも声の質を覚えると分かり易くなります。ほの暗い森の中で、喉のオレンジ色がひときわ映えます。

キビタキ

庭にエサ台や巣箱を設置すると野鳥を間近かに観察できます。

エサをやる適期は晩秋から春まで、野外に植物の種や昆虫など鳥のエサが少なくなってくると、庭のエサ台に良く集まるようになります。野鳥は生まれた年の冬を越すのが大変で、半分以上の若鳥が死んでしまいます。その為、野鳥の平均寿命はとても短くスズメで1.3年、シジュウカラでは1.1年という研究結果が有ります。ですから多少身勝手な考えかも知れませんが、サを与えるのは自然を乱す悪いこと、と決めつけなくても良いと思っています。一旦冬を越した鳥は、数年間生き続けますが、小鳥では長くても5~6年、10年以上生きるものは稀です。

エサ台に来る鳥はエサの種類によって色々です。スズメやキジバト・ドバトなどはアワ・ヒエ・ヒマワリの種などの穀類、メジロやヒヨドリはミカン・リンゴ・キウイなどの甘い果物が好きです。ヒヨドリは他の鳥を追い散らしてエサを独占しようとするので、ちょっと困りものです。スズメは良く来るのですが余程注意深く覗かないと直ぐ逃げて行ってしまします。人に寄り添って生活し、人が居ない所では見られない鳥なのですが、頑なに一定の距離を取ろうとするのは、長年人に捕食されたり稲を食べる害鳥として退治されたことが遺伝子に刻まれているのでしょう。一方ヒヨドリやキジバトは人懐っこいというか、エサ台が空になっていると窓越しにじっと私の顔を覗き込み、エサを催促します。この2種はここ数十年の間に生息域を山地から都市部へ広げてきたので、余り人を恐れない性質なのでしょう。

牛脂の塊などをぶら下げておくとメジロやシジュウカラがつつきます。軽井沢や八ヶ岳など山懐の宿に泊まると、窓越しの木に牛脂をぶら下げて有り、コゲラやアカゲラなどのキツツキがやってくるのを見ることも有ります。北海道のとある野鳥観察で有名な宿では、シマエナガ、ハシブトガラ、ゴジュウカラ、オオアカゲラ、ウソなどもエサ台に集まります。

①メジロ
名前の通り目の回り(アイリング)が白く目立ちます。ツバキなど冬咲く花に顔を突っ込んで蜜を探り顔中花粉だらけにしている姿がよく見られます。虫が少ない冬季に花粉を運ぶ重要な役割をしています。春のさえずりは非常に綺麗な声です。公園などで良く聞かれるので注意して聞いて見ましょう。

メジロ

②スズメ
写真は庭のエサ台の下にこぼれたエサに集まるスズメたちと親鳥がエサ拾ってヒナに与えているところです。窓越しに写した写真で、窓を開けると逃げてしまいます。

スズメ
スズメの給餌

③キジバト
デデッポッポーという低い鳴き声は市街地でもよく響きます。ドバトは群れますが、キジバトは群れず、単独かペアで居ることが多いです。親鳥はオスもメスもピジョンミルク(そのう乳)と呼ばれる濃厚な液を分泌して子どもを育てます。虫が居ない時期でも子どもを育てられるので、年に数回繁殖します

キジバト

④シマエナガ
大人気の鳥で、ぬいぐるみやお菓子など北海道土産の定番です。実際写真を撮ってみると実に可愛い、人気が出るわけです。

シマエナガ

⑤ウソ
夏は亜高山帯で過ごし、冬は平地に降りてきます。黒い頭と赤い喉のコントラストが美しく、また丸っこい体形が可愛い人気の鳥です。
古語では「うそぶく」という言葉が口笛を吹くという意味も有り、口笛に似た、フィーフィーと言う鳴き方をするのでウソという名になりました。

近所の公園などを定期的に訪れることは野鳥観察の良い方法です。

少し大きめの公園で池などが有れば、冬は10種程度のカモ類を観察できますし、広場のような場所ではジョウビタキやツグミ、茂みではアオジ、カシラダカなどの冬鳥が見られ、空にはオオタカやノスリも飛びます。

最近はツミが都市公園で繁殖する例も増えて、子育ての邪魔しないように気を付けながらそっと覗くと白い頭のヒナが見られます。7月中旬は72候の「鷹乃学習、たかすなわちわざをならう」、ですが、丁度その頃親鳥と若鳥が公園内の木から木へと飛び移りながら、鳴き交わしたり、何か受け渡したりしているのを見ることが出来ます。近所で足繁く見ていればこその体験です。

春秋の渡りの時期は、都市公園でもキビタキやコサメビタキなどが数日間留まることが有ります。

また千葉県には谷津干潟、三番瀬、小櫃川河口という東京湾に残された貴重な干潟が有るので、渡りの途中のシギ・チドリ類を4~5月と8~9月頃に多数見ることが出来ます。千葉県野鳥の会では、谷津干潟、三番瀬、行徳、花見川の探鳥会を毎月一回実施していますので、こうした会の行事に参加して、スコープを覗かせてもらうと、普段なかなか見られないシギ・チドリ類を見ることが出来ます。

「渡り」は野鳥の半分以上が行います。数百~数千キロ、中には数万キロの距離を、毎年春と秋に渡っていく壮大な行為で、人間には想像もできない様な凄い能力です。昔の人は鳥が渡るということは全く分からず、アリストテレスは「多くの鳥が地下へ潜って冬を越す、他の種へ変化する」と考えていました。渡りが分かり始めたのは19世紀後半になってからです。数日間飲まず食わずで飛び続ける飛翔能力と心肺能力、太陽や星や磁気で方向と距離を感知する能力など驚くべきことが徐々に分かってきたのです。渡りの詳しい内容は「ちょっと詳しいヒント集」に順次掲載したいと思います。

①コサメビタキ
スズメよりも小さく、目の周りの白いアイリングで目が大きく見えます。地味な色合いで鳴き声も小さく
控えめな美しさと可愛らしさがバードウォッチャーの心を掴みます。

コサメビタキ

②ジョウビタキ
冬鳥の到来を告げる鳥です。ヒッヒッヒッ、カッカッカッと強い音で鳴きます。開けたところが好きなので、公園でよく見かけます。気が強い鳥で、窓や車のバックミラーに写った自分の姿をみて、ライバルの侵入と思うのか、突っついたりします。

ジョウビタキ

③ツグミ
だるまさんが転んだ、と言われる独特な走り方をします。これは落ち葉の下や土の中に潜むミミズなどが動く音を耳を傾けてじっと聞き、見つけるや否やさっと駆け寄り突っつくため、と考えられています。

ツグミ

④ノスリ
立派な猛禽なのですが、オオタカのような精悍さと言うより、太い胴体と腹帯模様で、愛嬌がある鳥です。夏は山岳地帯にいますが、冬は平地に降りてきます。小鳥も捕りますが、ネズミなどを好み、ホバリングして獲物を狙います。

ノスリ

⑤ツミ
最近都市公園でも繁殖するようになりました。幼鳥はセミをよく食べています。ツミは巣の周囲からカラスを追い払うので、オナガはツミの巣の近くに自分の巣を作って天敵のカラスに襲われるのを防いでいます。実際私の家の前の公園ではツミの営巣が始まると多数のオナガが集まって子育てしており、普段は見かけるカラスはほとんど見なくなりました。

ツミのヒナ
ツミの幼鳥

⑥ミユビシギ
砂浜にはハマシギとミユビシギを見かけることが多いのですが、ミユビシギは体全体が白っぽくてずんぐりと見えるシギです。波打ち際ギリギリのところで採餌するので、波に合わせて行ったり来たりちょこちょこ走り回る姿が、ラインダンスに例えられま

ミユビシギ

野鳥は世界全体で1万種余りいます。
南極にはペンギン(ペンギンも鳥類です!)が居て、コウテイペンギンは500m以上の深海にも潜れます。エベレストの8200mの高所で観察されたキバシガラスやヒマラヤ山脈を横断して渡るアネハヅル、熱帯に多く住むハチドリやタイヨウチョウの仲間、白夜のシベリアで子育てするシギ・チドリ、砂漠にも固有種がいますし大海原を一生飛び続けて過ごす海鳥など、地球上のあらゆる環境に適合して繁栄しています。

日本では650種余りが観察されています。全国各地には有名な探鳥地が多数あります。北海道や離島など、その場所に行かないと見られない鳥も沢山います。全国の探鳥地を訪れて各地の自然条件とそれに適合した野鳥たちを観察することは、日本の自然の多様性や生命進化の素晴らしさを実感できる旅になります。

全国のおすすめ探鳥地で全国の探鳥地を何カ所か紹介しますので、是非そうした場所にも足を運んで、自然観察・野鳥観察を楽しんでください。
                                                         (文・写真 安武 弘幸)

   

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