トチノキ


NPO法人千葉県森林インストラクター会
    種 名
トチノキ  (トチノキ科 トチノキ属) 

    漢字名
 栃の木・橡の木

  
   

    英 名
Japanese horse chestnut

 
Aesculus Turbinata

    樹木区分
落葉高木

     

森林インストラクターの一口メモ
 最近都会では紅い花が咲くベニバナトチノキが街路や公園に植えられている。これはアメリカ産のアカバナトチノキとヨーロッパ産のマロニエの交配種で、花つきはよいが、実は若いうちに落ちてしまう。
私は東北地方の育ちなので、毎年正月に隣の人が、トチ餅をついて持ってきてくれた。薄茶色の餅の中に小豆餡が入っていて、トチ独特のほのかな渋みがあり、白米の餅よりおいしかった。大変手間がかかるので、私の母はトチ餅をついてくれたことは無かった。

<分布状況  >

( 千葉県レッドデータブック ― )
千葉県 

全国
九州、四国、本州、北海道。公園や街路でよく見られる。
<生息地・生息環境>
平地に温帯林がある中部地方や東北地方では肥沃な土地や、ふたつの沢が出会うような所にできる平坦地にもごく普通に生えている。サワグルミなどと渓畔林を形成する

<特 徴>
  • 日本固有種のトチノキ は5~10枚の小葉からなる大きな葉をつける。この葉は掌状複葉といって1枚の葉である。葉は対生する。
  • 葉だけでなくトチノキ はすべてにおいて際立つ特徴を持つ。そのひとつは枝に刻印された葉痕である。トチノキ の葉痕は扁平な卵状逆三角形で、下方の 2 辺に沿って小葉の数と同じ維管束の痕が小さな突起となって並んでいる。
  • トチノキ の葉痕は冬場、葉がなくともその猿の顔にも似た葉痕を確認することで、その木がトチノキ であることがわかる。冬芽は触るとベタベタする。
  • 5~6月、香りをともない開花する。花は大きな円錐花序で、ひとつの花序に雄花と両性花がまじる。
  • 秋になれば、直径3~5㎝の表面がでこぼこした果実が、樹下を埋めるように落ちる。
<類似種・一緒に覚えたい樹木>
ホオノキ

<見分け方>

トチノキ は、もともと 1 枚の葉であったのが 5 枚の小葉に分かれたと考えることができるので、5 枚の小葉の付け根はぴったり 1 カ所に集まっている。それに対しホオノキ は、あくまで複数の葉が集まって掌状複葉のように見えるだけなので、それぞれの葉の付け根をよく見ると微妙に位置がずれている。

<利 用> 
  • 木材や道具などへの利用材は緻密でかつ柔らかく、加工が容易。きれいな木目が出て、高級板材とされる。耐久力は劣るものの、削った面の光沢に品があり、床柱や磨き床板、天井板から違い棚や 板などに利用された。材は均質でもあるため、ロクロ物などにも向いており、捏ね鉢や盆づくりに重宝されている。
  • 食用種子は保存がきき、採取した澱粉は冬場の食料として重要であった。種子にはサポニンやアロインなどの物質を含んでいて苦味が強く、そのままでは食べることができない。古くから東北地方で行われていたのは数日間、採取した澱粉を流水に晒し、その後木灰を混ぜた熱湯を注ぎ、水洗いした後セイロで蒸す。さらに米を混ぜてから、ついて餅とする方法であった。トチの実は餅や煎餅などの土産物になっている。手間がかかっても昔の山里では貴重な救荒食料だった。
  • 花は蜜源として利用され、良質な蜂蜜がとれる。

トチノキ(花)
黄色は蜜有、赤は売切れの印
トチノキ(開葉)
トチノキ(実)
作成者:植沢 俊  高橋 和枝
本サイトの記事・画像等の無断転載は禁じます。

PAGE TOP