NPO法人千葉県森林インストラクター会
種 名
漢字名
桐
別 名
英 名
Empress tree, Princess tree
学 名
Viburnum Dilatatum
樹木区分
落葉高木

森林インストラクターの一口メモ
奈良県春日山で初めて キリの花を見たときはその鮮やかさに圧倒された。花は よい香りがする。
桐は鳳凰の止まる木として(元は青桐だった)古代中国で神聖視されていたことに倣って、日本でも一説には嵯峨天皇の頃から、天皇の衣類の文様に用いられるなど、菊紋章に次ぐ格式のある紋とされた。室町幕府以後は、武家が望んだ家紋とされ、足利尊氏や豊臣秀吉などもこれを天皇から賜っている。このため、五七桐は「政権担当者の紋章」という認識が定着することになった。近代以降も五七桐は「日本国政府の紋章」として大礼服や勲章(桐花章など)の意匠に取り入れられたり、ビサやパスポートなどの書類や 貨(現在の五百円)の装飾に使われたりしている。
福島県の奥会津地方はキリの産地で町の家々の間にキリ畑が広がり、5月~6月のキリの花の咲く時期は、キリの花が町全体に広がり薄紫に町が霞み、なかなか美しかった。キリ材は白いほど高級とされ、伐採したキリ材は3年ほど雪の中にさらし、より白くしてから 箪笥等を作った。
<分布状況>
( 千葉県レッドデータブック ― )
千葉県
広く全域に植栽。
全国
広く全域に植栽。
<生息地・生息環境>
中国南部原産とされる。古くから広く一般に植栽され、翼のついた小さい種子は風でよく撒布される。
発芽率が高く、好陽性で耐湿性もあって生長が早いため、随所に野生化した個体が見られる。
<特 徴>
- 春、葉が茂る前に紫色の花が咲き、遠目にもキリとわかる。樹高8~15m。花は両性花で、花期は5~ 6月。長さ5~6cmの紫色の先が5裂した筒状釣鐘形の花を、枝先に大きな円錐花序を出して、多数咲かせる。実は秋に長さ3~4cmの卵形のさく果をつける。葉は長さ10~30cmの広卵形、または浅く3~5 裂に切れ込む。全縁で対生する。樹皮は灰褐色で、縦に浅く裂ける。
- キリ材は比重 0.3 で日本産樹種の中で最も小さく、狂いが少ない。また湿気を通さず燃えにくいなどの優れた工芸的性質をもっている。
- 木材の抽出成分には昆虫を寄せ付けない成分(パウロニン等)や、防腐力のあるタンニンを含んでいる。このため乾燥した キリ材は虫がつかず、腐りにくいため、長期間使用可能であった。この特性により、キリは高級木材として重宝されてきた。
<類似種・一緒に覚えたい樹木>
アブラギリ(トウダイグサ科)、アオギリ(アオイ科)、イイギリ(ヤナギ科)、ハリギリ(ウコギ科)
<見分け方>
上記の種は葉の形や大きさが キリに似ているので、名づけられた。イイギリ以外の葉は分裂葉である。
ハリギリ、アオギリは葉身が 30cm と大きい。イイギリの葉は不分裂の キリの葉に似ている。
<利 用>
- 日本では箏(こと)や箱、家具、下駄、特に箪笥の材料として用いられることが多く、桐箪笥といえば高級家具の代名詞である。かつて日本では女の子が生まれるとキリを植え、結婚する際にはそのキリで箪笥を作り嫁入り道具にするという風習もあった。キリは成長が早いために可能なのである。また発火しづらいという特徴から金庫などの内側にも用いられる。近年は北米、南米、中国、東南アジアから輸入されるものが多い。

作成者:鍛冶 健二郎 高橋 和枝
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