イチョウ


NPO法人千葉県森林インストラクター会
    種 名
イチョウ(イチョウ科 イチョウ属) 

    漢字名
 銀杏、公孫樹

  
ギンアン

    英 名
Ginkgo, Maidenhair Tree

 
Ginkgo biloba

    樹木区分
落葉高木

     

森林インストラクターの一口メモ
 学名の「Ginkgo」は、yをgに誤認され、そのまま学名、英名となったと言われている。 
英名の「Maidenhair」は、クジャクのように美しい葉、掌状に細かく分かれた葉を有するとの意味。
街路樹など、全国で普通に見かける樹木だが、分類上は奇異な位置にあり、例えば広葉樹・針葉樹の区分では如何にも広葉樹に該当しそうだが、むしろ特殊な針葉樹にあたる。裸子植物。
世界最古の樹木の一つであり、イチョウ科の植物は約 2 億年前の中生代から新生代にかけて世界的に繫栄し、世界各地(日本では山口県や北海道)で化石が出土しているが、氷河期にほぼ絶滅し、イチョウは唯一現存する種である。現在イチョウは、生きている化石としてレッドリストの絶滅危惧IB類に指定されている。
原産地・自生地は確認されていない。11 世紀初めに当時の北宋王朝の都があった開封に植栽され、広まったとする説が有力とされる。その後、仏教寺院などに盛んに植えられ、日本にも薬種として伝来したと見られる。
中国では公孫樹と呼ばれる(おじいちゃんが植えて孫が実を採る)。和名「イチョウ」の語源は鴨の脚に似ていることに由来。鴨脚の中国発音(イーチャオ、ヤーチャオ)から転じたという説が有力。
根の張り具合によっては枝から円錐形の突起(気根、乳と呼ばれる)が垂れ下がる。これは乳イチョウと呼ばれ、安産・子育ての信仰対象( 鬼子母神など)とされる。
街路樹として 57 万本のイチョウが植えられており、樹種別では最多本数。東京都、神奈川県、大阪府の県木。全国33 市の木。都のマークはイチョウ。そのマークのある道は都道。
銀杏は日本全土で生産される。特に愛知県稲沢市(旧:中島郡祖父江町)は生産量日本一。
銀杏はギンコール酸などを含み、漆などのようにかぶれなどの皮膚炎を引き起こす。月の初め頃、独特の葉の開く姿を見ることができる。(松島)


<分布状況>

( 千葉県レッドデータブック ― )

千葉県
各地に植樹されている。
全国
人為的な移植により現在では全国的(世界的)に分布。

<生息地・生息環境>
日当たりの良い道路沿い、仏教寺院、公園などに植樹。

<特 徴>
  • 樹高 20~30m の落葉高木(大きいものは 45m)。葉は扇形で葉脈は原始的な平行脈を持ち、二又分枝して付け根から先端まで伸びる。
  • 雌雄異株で、葉の輪郭で雌雄を判別できるという俗説があるが、実際には生殖器官の観察が必要。
  • 受粉様式は被子植物と異なる。まず受粉した花粉は、雌花の胚珠端部の花粉室に数ヶ月保持され、その間に胚珠は直径約2cm 程度に肥大し、花粉内では 2個の精子が作られる。9 ~10 月頃、精子は放出され、花粉室から造卵器に泳いで入り、ここで受精が完了する。→日本の平瀬作五郎による世界的大発見。受精によって胚珠は成熟を開始し、11 月頃に種子に熟成する。種子植物で精子が存在するのはイチョウとソテツ類だけ。
  • 樹皮はコルク層が発達し、独特の模様となる。
  • 果肉は軟化しカルボン酸類特有の臭気を発する。樹木としては長寿で、各地に幹周が10mを超えるような巨木が点在。落葉前の葉は鮮やかな黄色に黄葉し、並木道などでは風物となることも多い。
<類似種・一緒に覚えたい樹木>





<見分け方>
 
<利 用> 
  • 食用:銀杏は健康な一般成人では、適切な量であれば安全。一度に多食すると中毒を起こす。また茶碗蒸し、炊き込みご飯に入れると美味しい。
  • 木材:油分を含み水はけがよく、材料も均一で加工性に優れ、歪みが出にくい特質を持つ。カウンターの天板・構造材・造作材・建具・家具・水廻りなど広範に利用されており、碁盤や将棋盤にも適材とされるほか、特にイチョウ材のまな板は高級とされている。カヤよりも廉価、カツラより高級。
  • 防災:火に強い性質があるため、江戸時代の火除け地に多く植えられた。
  • 街路樹:黄葉時の美しさと、剪定に強いという特性から、街路樹として利用される。薬用:脳血管障害防止に役立つ。アルツハイマー病抑制にも効く。
イチョウの雌花
イチョウの雄花
イチョウの葉(夏)
イチョウの葉(秋)
銀杏
作成者:松島 学
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