FIC入会後をふりかえって


FIC入会後をふりかえって


齊藤美穂子

2408

あらためてふりかえりますと、森林インストラクターの資格をとってから、20年近くになることにびっくりしています。

手元にはFIC入会前後から、千葉県内の歩いた場所と見た植物を書き留めたメモ帳があります。見返してみたところ、最初のうちはほとんどが東大演習林パトロールと、個人的に参加していた清和県民の森のイベントでした。

東大演習林春・秋の一般公開は、FIC入会前から知っていて何回か訪れていましたが、FICに入会してから実際に自分が案内できる立場になったことがとても嬉しかったのを覚えています。このパトロールは、春と秋の年2回、時間は9時から16時まで、パトロール区間は加勢林道から黒滝ゲート、猪ノ川林道、柚ノ木歩道、地蔵峠までを、案内のプラカードを持ちながら何往復かするというものでした。丸一日、房総の森を歩きながら色々な方と話をするのはとても楽しい時間でした。

このパトロールにはAbiesの皆さんのほか、野生生物調査会の方も参加されており、会員に中学時代の恩師池田文隆先生がいらっしゃいました。池田先生は理科の先生で、道端で拾ったタヌキの死骸を理科室の冷蔵庫に入れておき、生徒に見せるという衝撃的?な授業をされていたユニークな先生です。先生と再会してからは、演習林パトロールも一緒に歩くことが多くなり、そのうちに先生がやっていた高宕山周辺でのニホンザルの調査にも何回か同行するようになりました。サルに装着している発信器からの電波を、アンテナで受信(これがだいぶ難しい…)あとを追いかけながら、田んぼに入るサルの群れを見つけたら花火で追い散らすというものでした。

ある春の一般公開で、ふと花弁のない不思議な花をつけている小さな植物を見つけました。池田先生にその場で聞いたところ、「ヤマトグサだと思う」と一言。小さな花は、ヤマトグサという牧野富太郎博士が日本で初めて新種として発表した植物だったのです。この時はそんなことは知る由もありませんでしたが、何回同じ道を歩いても、いつもなにかしらの発見があり、新しい植物に出会えるのが東大演習林パトロールの魅力でした。

もみじ郎の前で
いつかの観察会。相馬さんと

FIC入会当初から、途中、仕事や引っ越し、子育てのためだいぶ長いブランクはありつつも継続して参加しているのは野外講座です。入会当初にはなかった南総部会ができ、房総の山々を歩いている方達の入会もあって、県内の山を登る野外講座によく参加しました。石尊山のコースはその中でもロングトレイルで、一番印象に残っています。昨年担当した大多喜の野外講座では、この石尊山を遠景に望むことができ、当時の講座に参加された方も多々いらっしゃっていたので、昔話?に花が咲きました。

オブザーバー参加からサブチーフまで経験させていただき、いすみ市の国指定天然記念物太東海浜植物群落やホルトノキを巡るコースで初めてチーフを務めました。このコースは、南総部会の皆さんに相談したところ、小池さんや相馬さんがなんとか実施したいと応援してくださり、神子さん、渡邉さんの多大なご協力のもと無事に終えることができました。

この度、野外講座の廃止が決まりました。FICの主催イベントでも、残念ながら県外の公園や庭園での講座がほとんどになり、県南方面へ行く講座はほとんどありません。千葉県の自然の最深部ともいえる房総以南に目を向けることが、今後、FICとしての責務の一端ではないでしょうか。整備された自然の中だけではない森の案内は、森林インストラクターとしても必要だと思います。

FICでは野外講座のみの参加ですが、少ないながらも大切な人とのつながりもできました。いすみ環境と文化のさとセンターで海辺の観察会の講師を引き受けていますが、海岸林に造詣の深い寺嶋さんにご快諾いただき一緒に活動しています。いすみ市教育委員会主催で市内の未就園児から小学生の親子対象のイベントでは毎年、宮崎さん、椎名さん(その前は藤田浩二さん)がいつも快くご協力してくださり、楽しいイベントになっています。

FIC入会を通じてできた人とのつながりに感謝しながら、千葉県の自然にこだわりなががら活動を続けたいと思います。また末筆ながら、FICの一層の発展を祈念いたします。

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