大きな視点で自然を見る(第3回 最終回)


NPO 法人千葉県森林インストラクター会
事業区分: ステップアップ講座活動分野: 自主活動
開催日時:2026年 1月 22日(木)19:15~21:00活動種類: その他
開催場所: オンライン受講者: 24名

活動概要

【今回の講座概要】
1.スダジイ・マテバシイ・クスノキについて(前回講義の振返り)
2.日本のブナ林について
3.森林環境教育をめぐる最近の話題

今回の講座の前説として、講師から森林インストラクターとして「みぢかな樹木」をテーマにすることの意義、また、「ブナの木」は全国の方々にとって興味ある共通の樹木であること、そして「樹木の話は楽しい」とのお話があり、森林インストラクターの志に触れていただいた。

【スダジイ・マテバシイ・クスノキについて】
<スダジイ>
スダジイの実は、生でも食べられ、縄文時代から食用とされ、江戸時代でもスダジイの実を採取していた記録がある。生態としては、実が未熟な時は殻斗が果実を包んでいるが、熟すと殻斗が3裂して果実が現れるようになる。

また、スダジイのどんぐりは受粉してから1年半かけて熟成する「2年成」だが、どうして、どんぐりには「1年成」と「2年成」の2つのパターンがあるのか?との講師からの問い掛けがあった。「1年成」は厳しい環境で生育する樹種に多く、短時間で早く種を作る戦略をとっているが、一方で「2年成」は常緑樹に多く、常に光合成して2年間かけて質の良いどんぐりを作る戦略をとっているというお話があった。

さらに、スダジイに絡み、房総半島の植物分布境界に位置する長南町笠森の暖帯性常緑広葉樹林の解説があり、「暖流の影響」と「内陸の影響」から南斜面はスダジイが茂り、北斜面はコナラが茂っている写真も紹介していただき、房総半島の特徴が知れて、とても興味深いお話だった。

<マテバシイ>
マテバシイの自生は九州南部だけとされ、現在の千葉県のマテバシイは植栽されたものとされている。マテバシイも「2年成」のどんぐりで3つ殻斗が集まっている特徴を「3兄弟」と表現され、また、マテバシイのどんぐりを拾うと殻斗がついていないとの説明もあり、「確かに!」と思うと共に何気ない観察力の深さに感心させられた。ちなみに、マテバシイの葉の特徴として、葉柄の基部が丸く膨らんでいることも紹介され、タブノキなどの葉との見分け方の示唆をいただいた。

講義ではマテバシイは枝が重く、耐久性が高いため、海苔養殖のノリヒビに用いられていたことの歴史を展開され、薪炭材としても南房総で利用されていたこと、ひいては縄文遺跡の調査から加茂遺跡(鴨川市)においてマテバシイの堅果が出土した記載を紹介され、房総半島におけるマテバシイは縄文前期には自然分布していたのではとの考察を紹介してくださった。

<クスノキ>
小学校教科書でも題材として用いられている身近な樹木。
クスノキは中国南部の原産と言われ、日本では確実に自生している場所が不明であるとのこと。クスノキからは樟脳が抽出されるため、明治期以降、貴重な輸出品として樟脳を採取するため、クスノキの植栽が激励された歴史を説明された。

講義の中では、神奈川県の真鶴町のクスノキの巨樹林の紹介があり、千葉県でも古くから植えられていたクスノキとして、香取郡神崎町にある「ナンジャモンジャの木」の紹介があった。350年前に水戸光圀公が「この木はなんというもんじゃろうか」と自問されたことが「ナンジャモンジャの木」の由来とされる。明治期に火災にあい、主幹は切断されてしまったが、根元から発芽したひこばえが現在でも見られるとのことだった。

【日本のブナ林について】
まず、はじめに講師から「ブナは日本全国に自然分布しているか?」との問いがあった。実は、千葉県と沖縄県には分布していないとのこと。続いて、戦後の拡大造林とブナ林の関係のお話があった。戦後は、「家を建てなければならない。そのためにはブナを切って、スギを植えなければならない」と拡大造林を主張していた大手マスコミがその後は「国有林は切るな、ブナ林は大切だ」との展開をしていたことを紹介され、時々の時代における風潮と本来の豊かさとのギャップに考えさせられた。

講義の中では、世界のブナ属の分布の説明もあった。ブナが占有するのは積雪量が多いところであり、他の樹種では深い雪で倒伏し、到底耐えきれない環境下でもブナは立ち上がって光を占有し樹林を形成できていることを雪深い長野県飯山市の鍋倉山のブナ林の事例などをまじえ説明があった。

さらに、今回のトピックスとして、北海道のブナの北限についてのお話があった。
ブナ林は北海道では、渡島半島のみに分布し、黒松内低地帯が北限となっている。しかしながら、北海道平野部の全域が気候的にみれば、ブナの生育範囲でありながら、黒松内が北限になっているのはなぜか?
この疑問に対して、山火事説など様々の仮説がたてられているが、講師は別の視点から黒松内低地帯は渡島半島の付け根に位置し、地形的な条件から、雪がたくさん降る豪雪地帯となっていることがブナの生育に有利な環境なのではないかとの考えを紹介してくださった。

【森林環境教育をめぐる最近の話題】
講師からはまず、森林環境教育は「森林や林業に対する理解」から学校教育を通じて「人を育てる」ことに視点が移ってきているとのお話があった。
さらに森林環境教育手引書の紹介を通じて、複数な視点から森林を見たり、考えたりできる教育の仕組みが大切だとの説明があり、森林体験活動の類型として「ふれあい活動」「森林資源に関する活動」「自然環境に関する活動」の3つに区分でき、緑の少年団活動においては、これに「地域貢献活動」が加えられているという解説がなされた。

本題として、講師が実際に調査に関わっている「緑の少年団の活性化」についての具体的な報告を通じて、現在、少子化のもとで、緑の少年団数の減少、指導を担う先生の確保の難しさ(先生が忙しいから/森林に関する経験がないから)など、いくつもの課題がある中で独自に特色ある活動を行っている島根県のNPO法人による出前授業などによる学校教育との連携、緑の少年団活動を多くの教科に位置付けている山梨県都留文科附属小学校緑の少年少女隊の取り組みの紹介があり、その効果についてお話があった。

今回の「大きな視点で自然を観る(最終回)」も盛り沢山の話題で聴講者からの勉強になったとのたくさんの声をいただきました。


講師 (チーフ講師、寺嶋 嘉春)


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