樹木観察ヒント集


雑木林の楽しみ ~色にこだわって眺める景色の話~

早春の雑木林はもえぎ色眺める景色の話

木々の若葉が萌え出す頃の色をもえぎ色と言います。
萌黄色、萌葱色、萌木色などの漢字があてられます。

春の気配が感じられるようになる頃、雑木林を外から眺めてみましょう。
いろいろな木が、それぞれの色で芽吹き始めています。

葉だけが先に芽吹くもの、花芽と一緒に芽吹くもの、芽吹いた葉に白い毛のあるもの
ちょっと黄色い毛のあるもの、赤味を帯びたもの、鮮やかな緑色のもの。

各々の木々が、特有の芽吹きの色あいを呈し、それが集まると林全体が
複雑なもえぎ色を演出することになります。
春の訪れを知らせてくれる色です。

各々の木々の名前が気になる方も多いと思いますが、取り敢えず、早春の雑木林はもえぎ色を楽しんでみませんか。

緑の色の数を数えてみるのも楽しい遊びです。5種類? 7種類? 
数えられた緑の数だけ、木の種類があると思ってください。

名前にこだわらないで、早春の雑木林を眺めて、「私のもえぎ色」を探してみませんか。

「春山 淡冶にして 笑ふが如し」 
北宋(960~1127)の山水画家、郭煕(かくき)の画論「臥遊論」の一節で
のどかで明るい春の山の形容として知られています。
「山笑う」光景を感じてみませんか。

それでも名前が気になる方は、葉に白っぽく見える毛のある木はコナラ
黄色っぽく見えるのはクヌギ、緑が鮮やかなのはイヌシデと思って確認をしてみて下さい。

春のもえぎ色が新緑に変わってきます。花が咲き終わって葉だけの色になり
新葉を保護していた毛や赤い色素が役目を終えてなくなり、木々の色あいは単調になってきます。

この季節、雑木林の中では常緑広葉樹の芽吹きが目立ってきます。
照葉樹林と呼ばれることが納得できるような光景になります。

枝先から新葉を出し、入れ替わるように古い葉を落とします。
古い葉の耐用年数は1年~4年くらい、樹種によって様々です。

多くの照葉樹は新葉を出すと同時に、花も咲かせます。
芽吹きの色は落葉広葉樹とは異なる色あいを呈します。

葉で覆われた雑木林は、風の通りが悪くなり、風が花粉を運ぶことができなくなります。
この季節になると、虫の出番です。ほのかな香り、強烈な香り、様々な香りで虫を誘います。

また、蜜や花粉をエサに虫を呼びこむこともあります。
地域にもよりますが、千葉県ではスダジイが花と一緒に芽吹いて黄色く輝きます。
タブノキやマテバシイの芽吹き時は花も目立ちます。 

雑木林の楽しみ方 ~隙間の光景を眺めてみる~

森に入ると、足元の野草に目が行くことが多いでしょうが、ちょっと視点を変えて、上を見上げて見て下さい。
そこには不思議な模様が見つかるかもしれません。

枝と枝、葉と葉が重ならないように、微妙な隙間を保つように育つ木々の姿です。
水路のようだとか、ジグソーパズルのようだと表現される方もあります。
葉っぱ同士のソーシャルディスタンスと表現された方もありました。

この隙間の光景はクラウン・シャイネスCrown shynessと言われる光景で、「樹冠の譲り合い」「内気な樹冠」と訳されたりします。
光を獲得するためとか、風の通り道のためとか、詳細はまだはっきり分かってはいないようです。

スダジイやタブノキなど、常緑広葉樹の林で多く見られます。微妙に雰囲気は違いますが、夏に葉を茂らせている落葉広葉樹林でも見られます。
広葉樹林にスギなどの針葉樹が紛れ込んでいると、更に不思議な光景になることもあります。

どんな理由でできたのかなど、難しいことはさておいて、取り敢えず、森に入って、クラウン・シャイネスを探してみませんか。
隙間から漏れてくる光を感じてみませんか。

カラスザンショウ

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